う  た

ぱっくりと開きし胸に沁み入りてウィリアム・モリス甘美な響き

連休に遊び興じしチケットの半券ごそりゴミ箱に捨つ

一人いて所在のなさをもてあますそんな夜に読むブラッドベリ

ああしたらこうしたら はて どうしたら 思いあぐねて寝不足の春

感覚は壊れてしまった だからこそ 今の私は完全無欠

時過ぎて夢は破れて山河あり今はしばらく休む時かも

我が守護の神将の像にめぐり合い雨に追われた美術館にて

亡き祖母の腕とも見える老木のひび割れし枝に桃の花咲く

赤茶けしカナブンの骸あちこちにころころと転がりて七月

秋の日のたゆとう川の水底に魚翻る銀の腹見せて

片羽の先の短き揚羽蝶青き空舞い消え果つるかも

デルヴォーが亡くなったので遠去かる汽車を見送る秋の夕暮