神話の森
オーディンを初めとする北欧の神々がいつ頃、信仰されたかということについては実はよくわかっていないようです。どれだけ古くからのものかもはっきりしませんし、今に伝わる神話が果たしてどれだけ古い時代の信仰を留めているかもわかっていないのが本当のところです。
しかし、この信仰はかなり目撃されていて、その証言が今に伝わっています。
古いところではタキトゥス『ゲルマーニア』によって、97〜98年頃の姿が伝えられています。
この頃には既に神々の主神の座にはオーディンが座っていました。もっともオーディンという名ではなく「彼らはもっともメルクリウスを尊信し」ていた、と伝えられています(『ゲルマーニア』泉井久之助訳注、岩波文庫、以下、同じ)。また、『ガリア戦記』によってカエサルも「特にメルクリウス神を尊崇する」と報告し、ヘロドトスも「彼等は神々のうち、第一にヘルメースを尊ぶ」と言っているそうです(『ガリア戦記』、ヘロドトスの引用ともに『ゲルマーニア』より)。スミマセン、これまだ確認してません(^^;;
また、ヘルクレースとウリクセース、いわゆるヘラクレスとオディッセウスもいたとタキトゥスは言っています。ヘラクレスはトール?と誰もが思うと思いますが、これには議論が多いと訳注にはあります;;
度重なる困難の果てに死を迎えてしまうヘラクレスは神ではなく、その性質からいえば、むしろケルトのク・フリンの方が近いかも、なんて思うのは、勿論、私で、そんなことは書いてません;;
オディッセウスはこの地にいたそうな、という説話をタキトゥスはかなり詳しく、まるで見てきたような奇怪な逸話を紹介していますが、まあ、ここではとばしましょう(^^;;
タキトゥスが聞いたところによれば、この頃、つまり、97、8年頃、ゲルマン人は古くから伝わる歌によって自分達の歴史を伝えていたそうです…・「古エッダだっ!」と思った人、惜しいっ。違います;;あれは十世紀前後に書かれたものだそうですから、これとは別の、しかし、似た内容の歌が、当時、伝わっていたのでしょう。
この話は天地創造において触れましたが、「大地から生まれた神」トゥイスコーとその子マンヌス。このマンヌスには三人の息子がいて……「オーディンだっ!!」と思った人、おめでとう、あなたは私と同類です。しかし、この息子らの名前にちなんで一族の名前が、インガエウォネース(北海近くの部族)、ヘルミノーネース(中間に位置する)、イスタエウォネース(その他)と呼ばれている、ってことで、インガエ…これってイング=フレイってことじゃないの?…と誰もが思うことでしょうが、そうです、注釈にもそうあります。フレイは「北海に臨む地のゲルマーニーに尊崇された神」だそうです。フレイファンは北海に行きましょう。フレイは神話ではあまり活躍しないですが、割と名前が残っている神だなあ。ガムラ・ウプサラにはオーディン、ニヨルド、フレイの墓があるとさえ言われているくらいですから。
さ〜てさて、で、メルクリウス、ヘルクレースに次いで、タキトゥスが報告するのが「マールス」。「ヘルクレースとマールスには、適当とみとめられる獣類を犠牲として、その満足を求める」。注釈は「トール神またはこれとならぶ他の軍神を指すか」と言っていますが、我々はすぐにティルを思いつくのではないかと思います。
何故か、女神イシスの名があがっていますが、どうしてなのか、私も知らん、とタキトゥスも言ってます。
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