巡礼
黒衣に身を包んだ、その人は。
遠くから来たと言った。
我が身を裁くために。
その人は巡礼の旅に行く。
黒衣に心を包んだ、その人は。
何も気づいていない。
その身が黒いことにも気づかず。
その人はせせら笑った。
赤く燃える篝火に頬を照らしながら。
溶けていく中傷がある。
寒く凍える夜空の星を眺めながら。
凍てつく真実がある。
歩き来た者だけがたどり着く。
道の途中の言葉の欠片。
一つ一つ拾うだけの気持ちの余裕が
自分にはあるか。
何もかもが凍り付く厳寒の現世(うつしよ)で。
両手で溶かせる心があるか。
生きる者はみな巡礼の旅の途中。
ならば歩こう。
この先までも。
ならば歩こう。
あなたもともに。