デジタルな自我
現実がめくれて
破れている 毎日
流れ込む 不安 と
流れ出す 不満 の中で
退屈 に生きている 日々
くり返し くり返す 日常に 膿んで
いつのまにか 肉体 を
失っている 自分
ぺらぺらの デジタルに
なって 入り込んでくるデータ
は
何一つ
実体のない世界
だから
何をしても いっしょ
そこに 価値 という基準はなくて
黄金 と 汚物 は同価値になる
だから
ぺらぺらの デジタル は
なんでも やってみる
おさえきれない 衝動 を
キレる という おちゃらけにのせて
やってみる
でも
本当は 全ては錯覚で
確かな肉体 と
確かな情念 と
確かな苦悩 と
確かな悦楽 とが
あって
そこに ちょこん と
始動できない
ボンクラな 自我が
あるだけ なのさ
昔むかしは
昔むかし は
物もあまり ない頃で
物への想いを あたためる
ほどの 時が ありました
かわいく きれいで 甘やかな
砂糖菓子の如き
物
それこそ
雑誌の付録だけ
けれど
物があり あふれ
視点定まらぬ 頃となり
はてた
今となっては
どこに
焦がれる気持ちがあったのか
どこに愛でる時があったのか
どこに目鼻がついているのか
どこで心が育まれるのか
今の少女は
気づかぬままに
ただ
代価と引き替えに
代価と同等の価値だけを
その物の中に見出して
焦がれ 眺めることもなく
あふれる価値を その中に
生み出す すべも 知らぬまま
それは(少女にとって)
ひどく可哀そうで
それは
ひどく気の毒な
時代 といって
よいのでしょう
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