ハンプティダンプティ
ハンプティダンプティ
塀の上
バランス取るのが
お上手で
もうしばらくは
塀の上
だから
あっちも こっちも
見えて
なんだか すごく
いい気分
最初っから
こんなふうに
はじめっから
やれたらいいのに
そしたら
きっと生きやすい
そしたら
ずっと生きやすい
あやうい バランス
微妙な バランス
そう長続きは しないって
わかっちゃいるけど
しばらくは
ハンプティダンプティ
塀の上
顔のないサンタクロース
季節はずれのサンタの人形
赤んぼに顔をしゃぶられて
あわれ
顔がとれている
なんて グロテスク
と
思いながらも
こうなってるのか と
思う 私
もしかしたら
人殺し も
こうなってるのか と
思いつつ
人を殺している のかも
そんなことを
連想してる
私て
なんて グロテスク
散歩
歩こう 歩こう
心の底に たまった澱が
摺り切れるまで
雨降る降る 住宅街を
ぺたぺた裸足に サンダル履いて
図書館へ行こう
絵本を読みに
美術館へ行こう
好きな絵はないけど
喫茶入って
ランチを 食べて
取り放題の パン5個ぺろり
水たまり
助走して
ぽんっと 飛ぼう
成功して 一人で
げらげら笑おう
歩こう 歩こう
心の澱が
きれいさっぱり
摺り切れるまで
形而上の<日常>と<非日常>
〜 ぼんやりとした時間の中で
たまりっぱなしの洗濯物
洗っていない皿の山
それでも 意識は遊離していく
いつもあっさり簡単に
ぼうっとしている
気がつくと
やってることとは違うこと
頭の中で
意識の中で
存在の中で
瞳孔の中で
角膜の中で
網膜の中で
脳味噌の中で
考えてる 考えてる 考えてる
ここには<不在>の自分がいて
今のところ
二人で定員 手一杯
頭の中で
体の中で
場面が二つ
シーンが二つ
まるっきりの
違う時間流れて
今のところ
つながっているけれど
これ 別々に
流れ出したら
きっと
分裂病っていうんだろうね
意識している
自覚している
覚悟している
自分がいて
それでもやめられない
<日常>と
<非日常>の
塀の上で
今日もぼんやりと
さぼっている
<日常>の中の自分
364日の不在
夜
凍てついた時間
意味のない画面 消して
真夜中過ぎ
お茶会の かわいらしい
ティーカップも 小皿も
チョコレートのついたフォークも
ピンクのテーブルにそのまま
私
冷えた肩を 聳えさせて
羽根の布団に
もぐりこむ
覚醒した意識のない
部屋の中は
静かだ
空には きっと
きのうの夜 見たような
まるい月が
震えた星が
人の目を射ているに違いなく
凍てつく寒さ
吠える犬の声
一年前の今頃は
まだ居た人を思い出す
一年前なら まだ
生きていた人を思い出す
明日の今頃
になれば
一年前
もう あの人は いない
生きてきた証の
薄さが
凍てつく
光景が 脈絡が 時間が 記憶が
ひび割れて
亀裂が入る
まるで 鏡を割ったように
映してきたものが ずれる
めくるめく想いの
交錯する中で
遠くなる思索の中で
布団の中の
小さなぬくもりが
生きていることを 思い出させる
花柄のティーカップの 上だけで
生きていてはいけない と
思い出させる
記憶を たぐり
皮膚を 感じ
私が
あの人と
つながり
延長線上に いる のだ
ということを
歓喜と 安堵と 至福の
中で
味わうことになる
喜びと哀しみと
希望と失望と
日常と非日常と を
くり返しながら
私は
花柄の小皿の外で
生きていくことになる
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