神話の森
以前、アーサーってのは熊っていう意味だというのを読んだことがある。へええええ、とすごく感心しまして、熊なんだあ〜としみじみしたので、そういうテーマでやってみようと思ったんですが。
「アメリカ人名辞典」(スチュアート、北星堂)を念のため、調べたんですが、「Artoriusとして記録に残るローマ人の家族名と関係あるらしいが、一方でケルト語系の名前とする説もあながち否定できない」とずいぶん慎重な言い方で、どこにも”熊”とは書いてないじゃないか;
アーサーが熊だったら日本語だと熊吉っつあんだねえ、と幼い頃、喜んだ私の思い出を返せ。
ここに一人の男がいた。
500年頃、ブリテン人はサクソン人を打ち破り、勝利を我が物にした。この指導者がアーサー王の原形だったのではないか、と『アーサー王伝説』のキャヴェンディッシュは言っています。
「これは皮肉にも、医大なるブリトンの英雄が現代のイギリス人の先祖と戦ったということを意味する。アーサーはおそらく王でなく、ローマとケルトの血を半分ずつ受け継いだブリトン貴族であった。彼は名をアルトリウスといったが、これはローマ名(おそらく「熊」の意味のケルト名のラテン化)である。・・・」(『アーサー王伝説』晶文社より)
やっと熊が出てきた。さて、熊はまだつきまといます。有名なブルフィンチの『中世騎士物語』(岩波文庫)では、
「アーサーはArctosとかArcturusとかいうその名が文字通りに示す如く、大熊星である。この星座は北極にごく近く、狭い範囲に円を描いた形に見えるので、恐らく有名な円卓の由来となったのだろう」
とオーウェンの説を披露しています。これも目から鱗の面白い説です。真偽の程はわかりませんが、こういうことはなるほどありそうだと思わせてくれます。
さて、もう一ついい本を見つけました。『世界人名ものがたり』(梅田修、講談社現代新書)。これは1999年1月に初版が出たばかり、皆さんも手に入れることができるでしょう。
「アーサー(Arthur)は、中世ラテン語ではアルトリウス(Artorius)です。この名前は本来はケルト的ですが、その語源ははっきりしません。しかし、伝統的にブリトン人の言葉arth(熊)とか、アイルランドのゲール語art(熊)と関係づけられてきました。・・・」
ううむ、だいぶ「熊」という証言が出てきましたね。この本の作者梅田氏は「おわりに」で、まもなく『ヨーロッパ人名語源事典』(大修館書店)が刊行される旨を書き添えていらっしゃる。ひゃー、思い切り楽しみです(^^)
これでアーサーという名前が熊という語源を持つと確証が取れたわけではありません。しかし、もし、これが熊なら(しつこい;)、北欧神話に出てくるベルセルカーにも通じるものがでてくるのではないか、とひそかに期待しているのです。勿論、そんなことは偉い先生は誰も言ってませんよ(^^;
さて、『世界人名ものがたり』はアーサーよりもギネヴィアについて詳しいです。次は妃ギネヴィアについて、この本を手がかりに見てみます。
ううむ、これ、ちょっとアップするのが遅れたのは、自分では綺麗におさまったと思ってた考えが、実はどうも破綻を来しているのではないかと疑問に思うところが出てきたからです。
どうしようかと思ったけど、まあ、とりあえず破綻したまま、アップしますので、御意見をお聞かせいただければ、と思います。
で、アーサー王のお妃ギネヴィア。
最初聞いた時、変な名前だなあと思いました。日本語にはない語感ですよね。
「アーサー王の名前」のところでも参考にした『世界人名ものがたり』。ここに開口一番、「ジェニファー(Jennifer)は、アーサー王の妃グウィネヴィア(Guinevere)に由来する名前です」とあって、目が点。
ジェニファーがギネヴィア?
それも知らんのか?と言われる方もあるいはいるかもしれません。が、いやあ、知りませんでしたねえ〜(^^;(否定しません;;)
で、毎度お馴染み「アメリカ人名辞典」をまた引いてみる。当然、ジェニファーです。
「Jennieに語形が似ているのは偶然で、実はGuenevereの英語的変形である。」
へええ、ここでもそう書いてある(疑っているわけではないのですけど;;)。じゃあ、Guenevereは?
「Gwenevere,Guenevere」
「語源はウェールズ語でgwen-の部分は"White"の意だが、他の要素部分は不詳。19世紀初頭のロマン主義により、(ことにアーサー王伝説への関心がよみがえるにつれて)文学作品のこの登場人物名が実人名に応用される機会が生まれた。しかしアーサー王の不貞の王妃Gwenevereの名に人気が出たとは考えにくい。最近Gwen(グエン)という形が独立名として現われ、それからGwynne(グウィン)などの別形さえ生まれた。」
へえー、グウィンって元はギネヴィアなんだ!ちょっと感心。
で最初、話はこれで終わりかけていたのでした。が、ある本をめくっていて、「女」に「グネ」とルビがふってあるのを発見、目が釘付けになりました。物は「英語の語源」(渡部昇一、講談社現代新書)。ギリシア語で
「女」が「グネ」というのだと。この語源を辿ると「生む」という意味を持つ語根に行き当たるのだそうな。
g音とk音は交替するから、queenもグネと同じ語源の言葉ということになるともある。グネ、・・・ギネヴィア・・・・安易かな・・・・
gwen-はウェールズ語で「白」と「世界人名ものがたり」にも明記してあるのだから、ギリシア語の入り込む余地はないようなものだが、でも、もしかして、ライスと米が同根ということもあるし・・・どこかでつながっている可能性もあるかも・・・・しかし、gnとgwとでは同じとは言えないわけだから・・・少々はまっています;;
図書館に行ったと思いねえ。そこでこんな記事が目についたんですね。
クノン
後期のアーサー王伝説によれば、クノン(クノン・ヴァーブ・クルドノCynon fab Clydno)は片目・片足で、大きな棍棒をかついだ黒い男と出会った騎士とされている。このフォヴォリ族らしき戦士は、明らかにアイルランドの凶暴かつ異形の海神の一族で、クノンに対し、泉に赴き、そこで見つけた銀製の鉢を水で満たし、さらにその水を大理石板にぶちまけるよう命じる。クノンがいわれた通りにすると、黒い騎士が雷鳴と鳥の囀りを伴って現れる。そこでクノンは、この神秘的な敵と戦うが、打ち負かされてしまう。
最近すっかり片目伝説収集家のようになってしまっているeika-kは思わずぴくぴく。片目?!片足?!いや、片目片足ついでにケルトとくりゃあ、あなた、当然、戦いの時のルーグのことを思い出すのが筋ってもんでしょう。
棍棒というと、タロットでありましたね。クラブがそうですね。
ついでに泉が出てくるか?それって、それって、ミミールの泉……なんてことはどこにも書いてない(。。;;
おまけにこの騎士、すこぶる強い。雷鳴を伴って現れるところなんざ、ちょこっとトールを思い出させてくれたりもしますが、まあ、これはゲルマンじゃなくてケルトですから…(^^;;
ケルトは全然詳しくないので、ご存知の方はいろいろとお教えくださいね(^^)とりあえず、片目の伝説、一つみつけた☆の巻でした。
・・・それだけかいっ?!って(^^;それだけです(^^;;;;