オーディンの森

神話の森

網〜北欧神話ロキにまつわるエピソード

唐突に思いついたので、唐突にアップいたします。
実はつい最近、『図説ヨーロッパの祭り』(谷口幸男・遠藤紀勝著、河出書房新社)という本を買ったと思いねぇ…森の石松かいな(- -;;
すごい執筆陣っ。谷口幸男氏といえば北欧神話ファンで知らない人はいないでしょう。北欧神話ファンのバイブル『エッダ―古代北欧歌謡集』『アイスランドサガ』の訳者でいらっしゃいます。で、遠藤紀勝氏はカメラマン。バイキングに魅せられて、写真集まで刊行したという方なのですが、惜しむらくはこの写真集を私は持ってません(涙)。
このお二人の名前が列記されたカラー写真満載の本。111ページの薄い本ですが、この内容で1800円!これを見逃す手はないでしょう!ちょうど疲れていた時でもあったし、色鮮やかな写真にしばし現実逃避するのもいいなと思い、久しぶりに本を買ったのでした。ヨーロッパに伝わる地元の祭りに北欧神話を見つけることができないかなという下心は当然ありありでした。
勿論、すぐにオーディンの姿を見つけることができましたよ。「ゲルマンの最高神・戦士の神ヴォーダンが、馬上のおどけた姿で現れ、冬の象徴として鞭で打たれる。」……(- -;;なあんか無茶苦茶嬉しくなーい;;
クリスマスを見れば、ユールの名前も出てくるし、猫が魔女の使いとして迫害される祭りを見ると、そこにはフレイヤの猫を見ることもできるでしょう。もっともこの祭りは別に起源を持った祭りでしたが。
魔女の使い魔って鴉と猫だったりしません?オーディンとフレイヤの揃い踏みって感じ。シャーマニズムが中世の魔術へと姿を変えていったということなのでしょうか。
熊男にはやっぱりベルセルカーが想起されますし、苔男?苔男??…・まあ、これはよくわかりませんが(- -;;
閑話休題にしましょう(^^;;
で、個人的にとっても興味のある祭りの仮面、これについても言及してあったんですよ。
仮面をあらわすmaskがMascheと同系語、だと。Masche、何だと思います?「網」なんです☆
これが今回の主題、「網」なんですが、網というと北欧神話へ造詣の深い方はすぐにロキが網で捕まったという話を思い浮かべられるのではないでしょうか?
わざわざ自分が捕まることを想定して作りかけた網を発見されて、想定した通りに捕まってしまう、なんてのは、あまりに間抜けな結末ですが、なんでここに唐突に網が出てくるんだろう?とずっと魚の小骨のようにどっかにひっかかっていたんです。
谷口先生曰く、「仮面をあらわすドイツ語Maske(英語mask)はMasche(編目)と同系語で、元来は死者をつつむ網を意味したらしい。」(・_・)
「未開人は死者を網でつつんだり、墓の上に網を張って死霊が出てこないようにした。これが『網によって顔をおおう者』『仮装した人』『仮面』をあらわすようになった。」(前掲書より引用)
目からぽろぽろ何かが落ちるような気がして、頭の芯が熱くなりました。
網が死霊を捕らえておくものだとしたら、あの時点でロキは死者の領域に踏み入ったということなのでしょうか?網を考案したのがロキで、神々はそれに倣って網を作る。網は最初からロキに属しているのです。その網が死者を封じ込める力を持っている。
網に捕らえられ、縛られて罰を与えられるロキ。苦しみのあまりの身悶えが地震と言われます。
彼が戒めから解き放たれ、復讐へとやってくる時、ロキはムスペルの子ら、あるいは地獄のヘルからの亡者と共に戻ってくるとされています。死者の領域からの復活という意味もあるのでしょうか。
ムスペルは原義不明ながらも火の擬人化ではないかと言われています。現代人たる私の連想では、火=地獄の業火、となりますが、当時の火への概念はどういうものだったのでしょうか。
時代は移ろいやすく、人の意識もまた時代によってまるで違います。火や網に対する感じ方が、あるいはこの小骨を取る手助けになるのかもしれません。現代人の意識のままで神話を解釈することは、それは哲学であり、宗教となることでしょう。神話の意味を知るためには現代人としての観念を無意識からも全て削ぎ落として、当時の意識を理解しなければならないと多くの書物に教えられました。
網というものへの意識が、こうして何かへと繋がっていくきっかけとなる。あらためて書物に教えられてきたことを実感した一瞬でした。

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ロシア・東スラブ〜断片の神々

一通のメールが来たと思いねぇ(最近こんなんばっかだな(^^;;)。
サイトへの丹念な感想と一緒に「ロシアの神話、神々の名とエピソードなどもし御存じであれば教えていただけないでしょうか?」とこれまた丁寧なお尋ねがあったんですな。面白いお話もたんとお聞かせいただいたことだし、そういや、ロシア、読んだことあったな、ちょうどオーディンがらみで調べたいとは思ってたし、少々お待ちを、とお返事したのが、一か月ほど前でしたかねえ…;;;
遅くなりました;;ようやく本、借りてきました(資料ないと書けないんだってば;;)。
っていったって、ロシア神話の原本となるような文献は残っていないんだそうで、今回、ネタ本とさせていただいたのは『世界の神話伝説総解説』(自由国民社)という、まあ、いわゆる神話目録のような本ですな。この見出しには「スラヴ(ロシア)の神話伝説」とある。スラヴとロシアって?と疑問の方のために説明しますと(って、いや、私もわからなかったんだけど(爆))、えっと、

「ヨーロッパ東部から来たアジアに広く分布するスラヴ系諸語を話す人々。」(広辞苑 第三版 岩波書店)

…辞書に頼ってやんの(^^;; 結構詳しいのよ、これが。

「東スラヴ人(ロシア人・ウクライナ人・白ロシア人)・西スラヴ人(ポーランド人・チェコ人・スロヴァキア人など)・南スラヴ人(セルビア人・クロアチア人・ブルガリア人など)に大別される。人口は移民も含めて三億人近くに達する。」

んだそうな。また、

「スラヴ語
インド・ヨーロッパ語族に属する語派。現代語としては、大ロシア語・ウクライナ語・白ロシア語・チェコ語・ポーランド語・ブルガリア語・セルボ-クロアット語を含み、バルト諸語に極めて近いので、バルト-スラヴ語の名で併称することもある。」

ということで、一応、スラヴ=ロシアという扱いでさせていただきます<(_ _)>
さて、ロシア神話。前記の本のこのページを担当してくださっているのは伊東一郎先生という人。有名な人なのかなあ、詳しくないのでよく知りません。ごめんなさい;;
伊東先生曰く、スラヴ人は9世紀までは文字を持たなかったため、文献資料が残っていないんだそうです。
こういう神話ってホント、多いのでしょうね。
詳しくは本を読んでいただくとして、わずかに残った断片の神々について、引用させていただきたいと思います。
スラヴの説明のところに東スラヴや西スラヴと大別されたように、それぞれによって信仰もまた違ったようです。東スラブからいきましょう。
まずは、ペルーン。
雷神ですね。伊東氏曰く、「東スラヴで信仰されていた諸神格のうちで最も重要なものは、ペルーン(Perun)」なのだとか。また、木曜日が「ポラーブ語で」…(・_・)ポラーブ語って?何だ???今度は辞書にも載ってないです;;困ったな;;御存知の方、お教えくださいませ;;で、その;;ポラーブ語で木曜日が「ペルーンの日」と呼ばれていたんだそうです。ああ、そうだ、このサイトで大変お世話になっている『暦と占いの科学』(永田久、新潮選書)に載ってるんじゃないか?…余談ですが、この本、今でも手に入るそうですよ。神話の森の会議室で目撃証言が…(^^)1200円だそうです☆読んでみたい方は是非、この機会にゲットしておいてくださいね(^^)ミニミニ情報でした☆
閑話休題。
って、げっ、ロシアは木曜日、「第四」って;;;違うっ、先生っ、違うやんか〜〜っ;;;;おかしいっ☆なんかおかしいっ☆…って、フィンランドに「ペルーン」ってある…ホッ…ん?!「ペルーン」たどると「金曜日」?!ペルーンの日って金曜日っ?!違う〜っ、違う〜っ、先生っ、それ違う〜っ;;;;
他のページにも御丁寧にフィンランド語の曜日名のところに「金曜はスラヴの雷神ペルーンの日」と書いてある。で、フィンランド語、木曜日は何かというとtorstai、トールの日だとか…(・_・???
私はホントはここで、多くの国で木曜日が雷神に捧げられているのはどうしてでしょうね、というふうに話を持っていきたかったのにっ、これじゃあ、持ってけないじゃないかっ(涙)
ロシア語、もしくはフィンランド語にお詳しい方の情報、お待ちしております(;;)
次;;ヴォーロスVolos。
家畜の神だとか。おっ(^0^)オーディンを引き合いに出してある。「オーディンのように死者の神と詩的予言者の二つの面を持っていたが、後に聖ブラシウスとの習合によって、ヴォーロスの語形にのみ『家畜の神』という属性が付与されたと考えるべきであろう」。
家畜の神がいるあたり、日本のような農耕民族とは違う民族の神話だなあと思いますね(^^)。
ストリーボグ。
気象現象を支配する神じゃないかと類推される以外、一切謎という神様。ボグbogというのは神を意味します。
ダージボグ。太陽神。
スヴァログ。
火の神。かまどの火を司ります。名前の由来はインド・イラン系のスヴァルガス「天空」に由来するとの説が有力だとか。
ホルス。太陽神?と?がついてる(^^;;
モコシ。地母神。
セマルグル。機能不明。諸説紛々らしいが、未だ解決を見ていない、らしい;;

…あ〜、長かった(^^;;大体こんな感じですか;;ぜいぜいっ;;
あんまり長くなったので、西スラヴは次回に続くにいたしましょう(^^;;乞うご期待;;

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