歴史の小舟

オーディンの森

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正月の風景

 里で母の遺品を見ている中で見つけた昔のNHK「今日の料理」。
昭和49年12月号でして。特集は”正月料理”。料理本の12月号の特集はだいたいクリスマスか正月と相場は決まっているんでしょうね。
巻頭のエッセイが南條範夫氏。タイトルも”元禄の御馳走”と、これまた人選といいテーマといい贅沢な内容ですね。
元禄14年3月14日、御存知、松の廊下の刃傷沙汰があったわけですが、その前日、勅使が殿中御白書院で饗応された料理のメニューが残っているとかで。ほうほう(・_・)ずらりと名前が並んで「豪華」とあるが、料理に疎い身には評価の方はとんとわからず。

「大名や旗本が相互に招待に饗応する時は、膾、羹、煮物、刺身、笋羹、二ノ汁、炙り物、引炙物、吸物、肴、冷し物などを調進するのが普通だった」

ともある。なるほど。こうしてみるとオードブルから始まる洋風料理と似ているような気も。しかし、膾とか羹とか難しい漢字は”羹に懲りて膾を吹く”の故事で覚えたような(^^;;うむ、膾が先に出るのに羹に懲りて膾を吹くとは、この膾は同じコースの膾じゃなくて、別の機会の膾ってことになるのか、あるいは古代中国では料理の順番がまた違ったのだろうか、どうでもいいです ね…
膾、わかんない人もいますか?「なます」と読みます。
これを『広辞苑』第三版(新村出編 岩波書店)で引いてみれば、「魚貝や獣などの生肉を細かく切ったもの」と「薄く細く切った魚肉を酢に浸した食品」「大根・人参をこまかく刻み、三杯酢・胡麻酢・味噌酢などであえた食品」とあります。
膾に刻む、とか言いますよね(^^;;ぎったんぎったんにやっつけることですね…いまどき「ぎったんぎったん」という擬態語も珍しくなってるような気もしますが(^^;;
広辞苑にもあります;;
「膾に叩く」;;「肉などを細かに切って膾を作る。こまごまに切る。転じて、人をひどいめにあわせる。」(^^;;言葉は想像力豊かにしてくれます;;
羹、これも今じゃ読めない人増えてるかも。「あつもの」と読みます。当然、「熱物の意」と広辞苑にもあります。意味はそのまんま、「菜・肉などを入れて作った熱い吸物」。
この羮という字、よく見るのは羊羹くらいじゃないでしょうかね。
なんで羊羹?という人もいますか?
字のまんま読めば、羊の熱物、羊の熱いスープってことになります。
その通りで、羊羹って意味は「羊のスープ」だったんですね。中国でそのスープを飲んで大変感激したお坊さんが日本で同じものを作りたいと思ったものの、羊の肉が手に入らない。しょうがないので辛うじて色の似ている小豆を代用した、と昔昔読んだ記憶がありますね。色だけ似てても味は全然違うやん!!と食いしん坊の子供の私は憤慨した記憶もまたありますが…(- -)
しかし、笋羮、というのがわからないなあ…「しゅんかん」とフリ打ってありますが。笋は「たけのこ」だからそれを使った料理なのでしょうが…
で、広辞苑にはちゃんと載ってました(^^)
「干したタケノコを種種に切り、アワビ・小鳥・蒲鉾などを入れて似た料理。中華料理の伝来という。」また、器の名前でもあるとか。
アワビかあ、かなり贅沢そうですが、全然想像つかないんですけど(^^;;
「笋干」「筍干」とも表記するそうで、なるほど、こうしてみると「笋羮」は当て字なのかもしれませんね。
さてさて、ページを繰ってみると、煮しめのページがあらわれて。
「煮染め」と書くんだ知らなかったな…てっきり煮沁め、かと…なんか痛そう(- -;;どっかに沁みそうな字ですね;;沁みる、と、煮染める、とじゃあ、まるで違います;;
煮染めを”手早くつくる料理法”なるコラムでは「昔から師走13日を事始といって、お正月の用意をするしきたりがある」とある。実は知りませんでした(- -;;勉強になります;;
昨今、おふくろの味が懐かしまれるようになってきましたが、このコラムの頃から既にそうだったらしく;;面白いのは、それを「家族制度の崩壊」に結びつけてあること。煮染めはたくさんの量を一度に煮ることで「時間が長くかかるかわりに、材料の持ち味がでてたいへんおいしく煮えてくれる」のだそうです。
なるほど。核家族ではせいぜい3人か4人分の量しか煮ないし、持ち味が出る前に煮えあがってしまうってことなんでしょうね。煮物の味が悪いのは料理する人の腕が悪いからじゃなくて、量の問題らしいですよ;;
”漆器をたいせつに扱いましょう”なんてページもあって。
「漆器はわが国の気候風土に最適のものでありまして、湿気がないと漆器は悪くなります」え!そうなんだ(・_・;;
そういうわけで「海外ではよいい保存ができない」のだそうです。
そういや、海外で保存されている古写真は同時代のものでも日本のものとは比べ物にならないくらい保存状態がよかったりしますもんねえ〜その逆のことが漆器ではあり得るんですねえ。だから、漆器は冷蔵庫に入れたりするのもよくないそうです。勉強になります(- -)
料理の上手だった亡母の残した本、料理に役立つ日はまだ来てませんが、昔のお正月を透けて見せてくれたような。昔の本はそれだけで歴史を伝えてくれることがありますね(^^)皆さんよいお正月を。

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